総務部予防保健課 食養生の料理店5

「社長こそ話が硬くなってるんじゃないですか。私は自分の意思でツインさんに就職させてもらい、楽しくやらしてもらってます。その延長線上に今日があっただけで、これ皆法縁ってヤツですよ。」

「癸生河くん、こっちこそホントに助かってるよ。現に30代以下の従業員の離職率は5年前から減少傾向だ。そして皆さん、今日は更に高みを目指して新たなスタートラインに立てることを報告したいと思う。」

「あ、あの、その前に社長、私のコト、皆さんとこうやってお会いするのは初めてなんですけど、本当にこの話に参加させて頂いてよろしいんでしょうか?」

「アツコくん、君にはここからとても大きな役目を担ってもらうことになるんだよ。東洋医学の専門家ではない君の、一般社員としての立ち位置と感性がこのグループには必要になって来るはずだ。」

「は、はぁ。私ってインドネシアでの生活が長く、日本の常識さえ十分じゃないのに、何かお役に立てるのかなぁ。」

「お〜お〜、社長もみんなも、そろそろ今日の話の本題に入りませんか。皆んな満腹で眠くなってきてるんじゃないですか。」

「そうだな。では、まず今日の取締役会で決定した内容と、今後の方針について説明し、皆さんからの賛同を得ようかな。」

社長は姿勢を正し、少し冷めた手元のコーヒーでゴクリと喉を潤した。

 

「では、本日のツイン工業取締役会で決定したことから伝えよう。来期、すなわち約1ヶ月後の今年4月より、総務部内に新部署の設置活動を開始する。そして仮運用の期間を経て、本格的な活動開始は下期の10月からだ。部署の目的は、所属従業員全体への福利厚生サポートの充実。すなわち、従業員が体調を崩す前に、そして体調を崩さないようにするための活動を通じて、企業活動を下支えし、企業利益に貢献することが最大の目的だ。メンバーは今日この場にいる癸生河くん、アツコくん。癸生河くんは品質管理課と兼務という形で社内に駐在する鍼灸師として活動してもらう。社内の一室を治療院として利用できるよう役所への申請手続きも3月末までには完了する予定だ。アツコくんには女性スタッフを中心に社員のお悩み相談窓口になってもらう。もちろんウチの20%近くを占める英語やバハサを母国語とするスタッフも丁寧に対応してやってほしい。様子を見ながら、場合によっては部下も付ける。社外アドバイザーとして、御堂くんとダイチくん。あなた達二人の立ち位置はこれまでと同様だが、これからは積極的に部署の活動に口出ししてもらいたい。アドバイザー契約料もお支払いする。あ、あとこれは君らにはどうでもいいことだろうけど、総務部長にはもちろん十分に話を通してるし理解を得ている。何よりワシは総務部を含めた管理部門の責任者を兼務してるから、基本的にワシが社内の責任者だ。金銭面、人材面で不自由な事があったら、総務部長に相談して、ワシんとこにもってこい。ワシからは以上。」