総務部予防保健課 食養生の料理店7

ということで、今日の時点で部署名の決定は保留され、新しい部署の発足とその目的、各自の大まかな立ち位置について情報共有された。アツコさんだけは少し肩身が狭そうな雰囲気を漂わせていたが、社長の人選眼は確かなものだったし、その他のメンバーは社内外での彼女の評判を知っているだけに、何も心配はしていなかった。

そう、彼女は外国語が堪能な上、インドネシアで幼少期を過ごし、シンガポールのインターナショナルスクールを卒業、日本の大学に通うようになってからは、日本語だけではなく日本の歴史文化についても熱心に学んだという、多様な価値観と努力する意志を併せ持つ有能な人材なのだ。日本人のみならず外国人相手にも、自身のアイデンティティをしっかり保った上で、会話の流れと相手の意図を汲み取り、話をまとめ、要点を引き出し、場を作り、調和を求めて周囲を引き込む、根っからのファシリテータだった。ツイン工業には社長の行動力と人徳に惹かれ、各方面から人材が集まってくるが、彼女もまた社会を動かすリーダーになるであろう人材の一人である。彼女の個性は今後社内で新しい福利厚生サービスを展開していく上でも、実際の治療を進めていく上でも役立つであろうことを、周囲は十分理解していた。

 

神農での夜は更けていく。

皆それぞれが社員の健康への意識や福利厚生のあり方、理想、そこに至る手段や課題、時間軸など規模の大小に関わらず、意見を交換しあった。

食後のデザートには立派な苺が運ばれてきた。