総務部予防保健課 予防保健課の活動1

5年近い準備期間を経て、ツイン工業株式会社で正式に予防保健課の活動が始まった。未だ準備期間といえど、この間私が費やしてきた活動はそれなりに社内で認知されており、私の紹介で御堂鍼灸院を訪れた従業員はパート、アルバイトも含め、社内全体の2割を超えていた。もちろん社長の理解と全面的なバックアップのおかげでもある。

 

 化学系の大学を卒業後、香川県の一般企業に就職した私は、勤め先の同僚達の体調不良や心の病、そしてそれらが職場の雰囲気を大きく損ねている環境に、どうしようもない虚無感を感じていた。そこはワンマン社長が一代で大きくした企業で、グローバル展開もめざましく、皆、仕事には精を出し、やるべきことを真面目にこなす社風だったが、如何せん香川という土地柄、男性社員の多くは昼食に必ずうどん店へと繰り出していた。また酒の場の意見交換で事業の方向性が見出されるほど、頻繁な呑みニケーションが習慣化されていた。寝不足や運動不足といった、健康とは程遠い生活スタイルが染み付いた職場環境。その結果、肩こり、腰痛、頭痛、食欲不信、高血圧に糖尿病、女性は生理不順や冷え性不妊治療が長続きせず離婚、なんて人の話まで耳にした。仕事中の労働災害や通勤中の事故もよく耳にした。地方の労働局の講演会に参加したときには、田舎の企業ではよくあることと、同様の事例が当たり前のように報告され、それとなく問題提起はされてはいたものの、諦めムード。具体的な成果に結びつくような対策は行政ではなかなか難しかったようだ。

 

とある武道に造詣が深かった私は、武道医学の知識を習得しており、整体術の真似事のようなことができた。いわゆる柔道家が骨接ぎの知識を習得していくようなものだが、私の場合、骨格というよりもツボや氣の流れを意識した整体術で、周囲からは指圧やカイロプラクティックのようなイメージを持たれていた。周囲に体調不良を訴える人が多く、肩こりや腰痛のサポートなどから、知識と技術を社内の友人たちに施す機会が増え、いつの間にか私が住んでいた独身寮の娯楽室は、毎週末、職場の知り合いたちが押し寄せる治療室のようになっていった。そんなことを続けて約2年、東京に住む武道の友人が鍼灸師の資格を取ったという知らせが聞こえてきた。その友人の話を聞いたところ、どうやら私が毎週末娯楽室やっていることは、場合によっては医療行為の一種になってしまい、何かあった場合、相手を守ることも補償することもできず、自身をも傷つけてしまう行為だということで、好意とはいえ今のまま継続することを強く否定されてしまった。