総務部予防保健課 予防保健課の発足3

「はいはい、よく聞こえてますよ。すいませんねぇ、この土日、お客さんのところで品質トラブルがあったみたいで、朝からバタバタしてて。結局、ウチでは品質記録提出して問題ないことが示せて、お客さんの勘違いだったみたいで、どうにか話が収まってよかったです。ま、でもお客さんのところで間違いが発生しやすかったのはウチでもラベル表記改善のヒントがあると思いますね。その辺、午後から課内で打ち合わせです。」

「しかし、ジョーさん。相変わらず器用ですねぇ。東洋医学も企業活動もよくごっちゃにならずに頭が回りますよねぇ。」

「ミドーくん、東洋医学もサラリーマンも、人の活動は全て陰陽のバランスだし、望聞問切は変わらないって。」

「そうやって、全ての事象を有機的に結合させて物事を考えられるような人は、そうそういないんですよ。これでお金勘定が出来たら完璧なんですけどねぇ。ジョーさんにも苦手なところがあって僕もホッとしてますよ。ほんと、ツイン工業さんで鍼灸師やらせてもらえるのは幸せですね。財務や備品管理は会社がサポートしてくれるんですから。もう大阪の鍼灸師会でも既に噂になってますからね。」

「お~お〜、もう顔出さないようになってずいぶん経つけどなぁ。未だに講演会のお誘いはよく来るんだが。ま、いいや。今日の打ち合わせ、はやく終わらせましょう。」

「このメンバーは話好きが多いんだから、ほっといたらどんどん話が脱線してしまうな。さて、今日も議長はワシがやらせてもらうよ。未病保健課は却下されたんだから、あとは皆んなの意見を聞いて、決めてしまおうか。」

「いや、社長。社長も話に入ってもらわないと困りますよ。最終承認は社長なんですからね。私は朝から女性社員の話も聞いてみて、結果、予防保健課という名前に行きつきました。未病はもう病気って話はなんとなく分かって、じゃあその病気にならないようにするのが目的なら、やっぱり予防方法を学ぶ保健室みたいな印象が大事かなって。」

「保健室。それ良いなぁ。よし、入り口には保健室の看板だそう!」

「え、社長、部署名、保健室?」

「ちがうちがう、部署名は会社としてしっかり登録してもらうけど、ニックネームみたいなのもいるだろ。部屋の入り口には保健室だ!」

「お〜お~、なんか意見が合うなぁ、アツコさん。私も予防保健課が希望だな。シンプルに目的が表されてる。私も社内で活動しやすいし、社外でも説明しやすい。」

「じゃ、決まりですね。僕たちも同じですよ。ね、ダイチさん。」

「え、ミドーくん?そうなの?」

活動の方向性と、今の社内での立ち位置、分かりやすさと伝わりやすさを重視した結果、参加者の意見は自ずと一致した。これも縁というやつだろう。新設される課の名前は『予防保健課』に決定した。