総務部予防保健課 丁寧な問診と初めての鍼灸3

「さて、今回の症状の原因について伺いたいことは概ね以上です。あとは実際に身体に触れながら治療方法を考えて行きましょう。あ、その前に今の姿勢で結構ですので舌を見せてもらえますか。ベロ、ベェってお願いします。」

「舌?ベェ?あ、はえ。れもなんれ?」

「はい、OKです。じゃあ鼻先を舐めるイメージで、下の裏っ側を見せてください。」

「ふぁい、こ、こうれひゅか?」

「なるほど、昔ちょっと怪我されました?」

正直、何をさせられているのか疑問ばかりだが、なんだかすっかりこの先生のペースに巻き込まれている。言われるがまま従ってしまう。その後、立った状態から前後左右に倒したり捻った時の腰の痛み具合を確認して、やっとベットに寝転がることができた。

「では、続いて手首の脉の様子から身体の状態を診ますね。左手からいいですか?はい、続いて右。じゃもう一度、左右同時に。」

手首を指で挟んで触れてきた時の感触が忘れられない。温かく柔らかく分厚い指だ。ふわっと触れたかと思ったらぐうっと押したり小刻みに弱めたり捻ったり。脈拍を測っているというわけではなさそうだ。

「では、そのままお腹を触らせてくださいね。」

上着をめくりあげてお腹を出したところ、遠目に眺めたかと思ったら、合掌した手でそっと腹に触れてきた。掌全体も温かくて柔らかい。その後ぐいっとへその左横を押してきた。

「あいたたたっ、なんですかそれ!?」

「ここよりもこっちですよね?」

更にへその反対側を押されると奥の方にズーンと股間の方に響く重い痛みが走る。スッと位置をずらし下っ腹の股関節あたりをぐいっと押された瞬間

「おうっ!そこはなんとも痛いですわ。」

「はい、わかりました。すいません、痛いところばっかり探ってしまって。じゃあ次はうつ伏せになれますか?上着は今脱いでもらっていいですか。」

「あいったいかぁ、この動きは。」

少し体を起こし、身体を捻ろうとしたところで、腰に痛みが走った。うつ伏せになると身体が強張る。

「では、ちょっと背中を触って行きますね。ここっ。」

「そこっ」

なんで痛いところが的確に分かるんだろうか。腰というより背中。押された瞬間に痛気持ちいい感覚で腰が伸びたように思える。

「では、しばらくそのままゆっくりしててくださいね。伺った情報を整理してきますね。」

「は、はい、え?このままでいいんですか?」

「ええ、うつ伏せでいいですよ。背中から治療して行きますんでね。」